カミングアウト論争に思う
2019年1月23日2018/11/20
同性愛のカミングアウトを巡ってツイッターで色々議論を目にしたので、モヤモヤっとしたことについて少し考えてみた。元のツイートまで遡ったら、思ってたのとちょっと文脈が違ったんだけど…まぁ「部分切り取りあるある」だぬ。ということで、元ツイートの主旨はともかくとして、盛り上がってた議論は「（同性愛）カミングアウトは、された人の重荷になるか？なるとすれば、カミングアウトしないべきか？」についてである。以下、そのことについて（文末追記有）。
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「カミングアウト」というのは「秘密の告白」だと思うんだけど、それってのは大体において一対一のものであって、真に「関係性」の問題であり、ケースバイケースという種類のものだと思う。つまり、一般化不可能、口出し無用ということである。「自分はカミングアウトされてこう思った、だから自分が人に秘密を打ち明けるときはこういうことに気をつけてる」という話ならともかく。そもそも「相手の負担」について考え始めたら、コミュニケーション自体が成り立たん。自分にとって何でもないことを口にしたら相手が「過剰反応」してびっくりした、そんな経験はみんなあるんじゃないかな？愚痴も自慢も説教も、ガス抜きも良かれと思ったことも、何もかも成り立たない。だってそれは「可能性」だから。とにかく口に出して相手の耳に届くまで、どのような反応が生成されるかは原理的には分からない。自分にとって大事な人ともう一歩親しくなりたい、自分の芯まで晒して、前提を共有して話したい。そんなとき、世の中の礼儀では、それはそのことを望んだ側から能動的に成されるべきことなんじゃなかった？
私にだって秘密はあるよ。それを打ち明ける相手は選ぶよ。それが相手の負担になりうることだってことも承知してるよ。でも、その秘密も私だから、どうして私が今の私なのか、どういうふうに物事と折り合いを付けてるのか、その秘密なしじゃ本当のところは語れない。だから、本当に私の思考の筋道みたいのを真摯に説明して共有したい場合には、それを打ち明ける。そうじゃない時はそれなりの方便（それだって嘘じゃないけど「本当のほんとう」じゃないだけ）で遣り過ごす。
秘密というのは、秘密にするだけの理由がある。それは社会的に受け入れられにくいことだったり、人に悪感情を抱かせやすいことだったりする。だから言わないんじゃないか。つまり、何事かが「秘密」になった時点で、それは話す相手を選んで気を遣ってるってこと。秘密を打ち明けるってことは、それを覆すだけの別の事情が発生してるってこと。そして秘密を打ち明けるリスクを自ら背負ってるってことだし、それだけ大事なものを見つけられたってことだし、それに向けて一歩を踏み出す勇気を持てたってことだと思う。
マジで内向的で、人の反応ばかり考えて、コミュニケーションの可能性を悲観的にばかり想定する人間は、精神を病むとか秘密を抱えたまま死んでくよ。「誰にも受け入れられない」まんまで平然としてられる人はそう多くない。自己破壊に向かうしかなくなる。「どうやら自分は不良品らしい」って思いを抱えて、それを誰にも訂正されないままなら。
あと相手の事情を考えずにものを言う人は、それがその人の秘密かどうかに関わらず一定割合でいて、それはもうDQNだからアナザーストーリーや。あと「秘密を打ち明けてる」って状況や、それがもたらす心理的リアクション（心配、動揺、プレッシャー、吊り橋効果、罪悪感、共犯感など）を利用する人もDQNやメンヘラ界隈にはいて、無自覚にやってるのもいるから怖いが、それも別のお話。
これはコミュニケーションの根幹に関わることだから、セクシュアリティのカミングアウトに限った話ではないと思うし、LGBTという言葉のない世の中になっても存在し続ける問題だと思う。しかしまぁ「相手の負担になるから秘密は打ち明けるな」って言う人があるなら、全く現代的な発想だね。「上っ面のコミュニケーションしかしません」と宣言してるようなもんじゃねぇか。
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追記、発信側のDQNの話をしたけど、受信側のDQNもいて、運が悪かったり人を見る目がなかったりすると悲惨である。「自己の安全のためにも良く考えて打ち明けよう」みたいな話をしてるのが元ツイート。…しかし、個人的にはやっぱり問題の発端になったツイートはモヤっとするな。途中にある「一発やらせてくれるかもしれない」とか、「一方的に重荷を背負わせるかも」発言とか…この人がゲイかどうか知らないけど、なんつーか、「女の敵は女」みたいな、「寄り添ってるつもりで実は自分が偏見に満ち満ちてた」みたいな？現状の外に出るのでなく、現状を維持・強化する方向で包摂される対象をのみ評価する姿勢？「正しい」んだけど言葉尻から滲み出る当事者じゃない感？そういう匂いを感じる…あくまで個人の感想ですが。
